形見分けで起こりやすいトラブルの事例と具体的な対処法を詳しく解説

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遺品整理を終えた後、形見分けをすることがあります。故人の愛用品や貴重品などを譲る際、意外と多いのが親族間でのトラブルです。どのようなトラブルがあるのか、トラブルが起きたときにどう対処すればいいのかなど、不安に感じる部分もあるでしょう。

本記事では、形見分けのトラブル事例や対処法などをご紹介します。

  1. 形見分けとは?
  2. 形見分けで多いトラブル
  3. トラブルが起きた場合の対処法
  4. 形見分けを行う際の注意点
  5. 形見分けのトラブルでよくある質問

形見分けに関する注意点をしっかり理解し、トラブルなく終えられるように準備することが大切です。


1.形見分けとは?

まず、形見分けとはどのようなものか、時期や対象者などを見ていきましょう。

1-1.故人との思い出を大切に温めるために行う

形見分けとは、親族や生前親しくしていた人へ、故人の愛用品を譲り渡すことです。故人との思い出を大切に温めるために行います。譲り受けた愛用品などから故人を近くに感じ、心の隙間を埋めるように、いつでも思い起こすことができるのです。

1-2.四十九日法要で行われるケースが多い

形見分けは、四十九日法要で行われるケースが多くなっています。とはいえ、厳密な決まりはありません。近年では、終活ブームに伴い、生前整理なども注目されるようになったため、亡くなる前に形見分けが行われるケースもあります。

1-3.形見分けの対象者にも決まりはない

形見分けの対象者は、時期と同じく、特別な決まりはありません。主に、親族や親しい友人などに形見分けするケースがほとんどです。エンディングノートがあれば、故人の遺志を反映した形見分けを行うこともあります。ただし、形見分けの品も遺産相続の対象となる場合もあるため、法定相続人全員が同意していることが前提です。

2.形見分けで多いトラブル

形見分けではどんなトラブルが起こりやすいのでしょうか? 具体的な事例を見ていきます。

2-1.誰が何を譲り受けるかで揉(も)める

形見分けで多いのは、誰が何を譲り受けるかで揉めるケースです。形見分けの品には、アクセサリー・着物・宝石・指輪・コレクション・書籍など、資産価値があるものも含まれます。形見の品は、親族に相続権があるため、親族以外の人へ形見分けする際は、事前にしっかり話し合いをしておきましょう。

2-2.口約束が問題となる

口約束が問題となり、トラブルとなるケースも目立ちます。生前譲り受ける約束をしていたという場合や、遺品整理で欲しい品が見つかったら渡すという口約束をした場合など、法定相続人全員の同意なく、勝手に約束を交わしているケースです。口約束を鵜吞(うの)みにせず、親族が中心となり事実を確認することが大切なポイントとなります。

2-3.いらないという人に譲ってしまう

形見分けは、義務ではありません。いらないという人に譲ってしまい、トラブルになるケースもあります。善意で譲ったとしても、強引に渡されたと相手に思われれば、お互いに不快な思いしか残りません。必ず相手の了承を得てから、形見分けを行うようにしてください。

2-4.形見分けの品を処分・紛失してしまう

遺品整理の際に、形見分けの品を処分もしくは紛失してしまうケースも目立ちます。資産価値ばかりに目をとらわれず、思い出にも比重を置いて遺品整理を行いましょう。処分・紛失した遺品は戻りません。法定相続人全員でしっかり話し合いをしてから、遺品整理を行うことで、トラブルを回避できるでしょう。

2-5.相続税や贈与税の申告漏(も)れ

高額な品を形見分けしてもらった場合、相続税や贈与税の申告漏れに注意してください。加算税や延滞税で対処してもらえるケースもあれば、脱税として刑事罰を受けるケースもあるでしょう。相続税や贈与税の申告に関しては、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

3.トラブルが起きた場合の対処法

形見分けでトラブルが起きた場合、どうすべきなのでしょうか? 具体的な対処法をご紹介します。

3-1.遺品整理や形見分けの前は話し合う

遺品整理や形見分けを行う際は、法定相続人全員が集まり、しっかり話し合いをしましょう。故人に資産以上の負債がある場合は、相続放棄を視野に入れるケースもあります。しかし、形見分けによって遺品のひとつでも譲り受けた相続人は、相続放棄ができなくなることもあるため、個人の資産と負債をすべて調査・把握しておくことが大切です。

3-2.揉め事が解決しない場合は弁護士に相談する

形見の品が取り合いになる揉め事も多くあります。話し合いで解決しない場合や問題がこじれそうな場合は、弁護士に相談してみるのも1つの方法です。弁護士に介入してもらうことで、遺産相続に関する問題も解決するでしょう。話し合いで感情的になるのを避けることもできます。

3-3.税理士に相談する

相続税や贈与税に関する問題が発生したら、税理士に相談してみましょう。一般の人には税金の算出方法が分かりにくいものです。形見分けの品が高額なものの場合は、事前に相談しておくことで、適切な税務処理の仕方をアドバイスしてもらえます。

3-4.形見分けの順番は目上の人からにする

形見分けには特別な決まりはありません。しかし、トラブルを未然に防ぐためには、渡す順番を事前に決めておくことが大切です。目上の人から順に渡すようにすると、トラブルが起こるリスクを軽減できるでしょう。

4.形見分けを行う際の注意点

形見分けを行う際は、どのようなことに気をつければいいのでしょうか? 注意点をご紹介します。

4-1.遺言書やエンディングノートがある場合

遺言書やエンディングノートがある場合は、故人の遺志を尊重した形見分けを行いましょう。遺言書は、親族だけで勝手に開封してはいけません。むやみに開封した場合、罰金の支払いを求められることがあります。家庭裁判所で検認手続きをし、開封してもらってください。記載内容を法定相続人全員で確認し、意向に沿った相続と形見分けができるよう、話し合いを行いましょう。

4-2.故人より目上の人に形見分けはしない

故人より目上の人に形見分けをするのは避けましょう。形見分けの品によって資産価値は異なりますが、中には年数が経過して古くなったものもあるでしょう。目上の人に贈ると失礼にあたるケースもあります。

4-3.なるべくきれいにしてから譲る

形見分けをする前に、クリーニングに出すなど、なるべくきれいな状態にしてから渡すようにしましょう。着物は、専門業者にクリーニングしてもらったほうが安心です。マナーとして、形見分け前のメンテナンスを心がけてください。

5.形見分けのトラブルでよくある質問

形見分けのトラブルに関する質問を集めました。

Q.形見分けしてはいけないものとは?
A.現金・有価証券・契約書などです。遺産相続にかかわるものは、形見分けの対象外となるので注意してください。また、故人が生前から飼っていた動物も、形見分けとして譲ることはできません。

Q.形見分けでトラブルが起こるとどうなるのか?
A.親族や友人との関係が悪化し、ケンカ別れしてしまうケースもあります。親族の場合、今後も冠婚葬祭で付き合う機会があるでしょう。険悪なムードになることを回避するため、形見分けのトラブルは極力避けることが大切です。

Q.故人と親しくしていたと名乗る人物が現れた場合はどうすべきか?
A.まずは話をよく聞き、故人との関係性を明らかにしましょう。形見分けを目的に、親しくしていたと語る詐欺も起きています。慎重に見極めることが大切です。

Q.形見分けをしてもらったら、お礼をしたほうがいいのか?
A.品物でのお礼は必要ありません。お礼状を出す程度に留(とど)めておきましょう。故人を偲(しの)ぶ気持ちを込めて書けば、気持ちがしっかり伝わります。

Q.形見分けの品は何かに包んで渡したほうがいいのか?
A.特別な決まりはないため、包装などは必要ないとされています。しかし、マナーとして、半紙に包んで渡したほうがいいでしょう。半紙の表書きは、仏式なら「遺品」、神式なら「偲ぶ草」となります。可能であれば、形見分けの品に一筆添えておくと、相手も気持ちよく受け取ることができるでしょう。

まとめ

形見分けは、親族や親しくしていた友人などに、故人の大切な品を託すものです。法定相続人全員で話し合い、揉め事やトラブルがないように行うことが大切なポイントとなります。起こりやすいトラブルと対処法を覚えておき、気持ちよく形見分けを終えられるようにしましょう。