8050問題の解決策は? 問題が起こる原因や厚生労働省の支援について

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80代の高齢者が50代の子どもの面倒を見ることを8050問題といいます。50代になっても社会に出ることができず、引きこもり生活を送っている人が増えているのです。そして、その子どもを世話するのが高齢の親となり、最近では世話をすることができずに殺人を犯してしまうという事件が問題視されています。どうすれば苦しい状況から抜け出すことができるのか、悩んでいる方は多いでしょう。

本記事では、8050問題の原因や対策・支援などについて解説します。

  1. 8050問題とは?
  2. 8050問題が起こる原因は?
  3. 8050問題を防ぐポイントは?
  4. 厚生労働省の支援や対策について
  5. 8050問題に関してよくある質問

この記事を読むことで、8050問題の原因や解決策などが分かります。悩んでいる方はぜひチェックしてください。

1.8050問題とは?

まずは、8050問題がどのような内容なのか、そして実際にどんな問題が起きているのかチェックしておきましょう。

1-1.長期化した引きこもりに関する社会問題

8050問題とは、2010年代以降から長期化した、引きこもりに関する社会問題のことです。引きこもり=10代の若い世代に多い問題と思われがちですが、中高年の引きこもり人口も増加傾向にあります。内閣府の発表によると、2019年3月時点で中高年の引きこもり人口は61万人も存在していることが分かりました。そのうちの70%は男性で、80代の親が50代の子どもの世話をしているというケースがほとんどです。80代の親が50代の子どもを世話するという意味から、8050問題と名づけられました。

1-2.これから増加するといわれている8050問題

内閣府が行った調査より、今後、8050問題がさらに深刻化するといわれています。実際に行った調査では、40~64歳の引きこもり人口が約61万人ですが、もっと多いと考えているほどです。世間体を気にして家族が周囲に隠している引きこもりや、親の身のまわりの世話をするという名目で同居しているパラサイトシングルも含めると、もっと引きこもりは多いといわれています。

1-3.殺人・無理心中という事件も

8050問題は決して人ごとではありません。80代の親がいくら50代の子どもに独立を促しても聞いてくれなかったり、相手にしてくれず逆に暴力を振る舞われてしまったりすることがあります。その結果、親が子どもを殺したり、無理心中をしたりするなどの事件が実際に起きているのです。8050問題が世間に広く知れ渡ることになったきっかけは、2018年3月に起きた親子がそろって孤立死した事件でした。検針にきたガス業者が異変に気づき、家の中に入ってみると親子で孤立死していたという事件です。8050問題が起きる事件には、さまざまな原因や背景が絡んでいます。

2.8050問題が起こる原因は?

それでは、8050問題が起こる主な原因をチェックしていきましょう。

2-1.家族の中で解決しようとしている

まず1番に考えられる原因が、引きこもり問題を家族の中で解決しようとする姿勢です。「50代の子どもが独立もせず、働きにも出ずにいるのが恥ずかしい」など、できるだけ外部の人間と触れ合わないようにしている家庭では、一向に引きこもりを解決することができません。親が世間体を気にしていては、子どものためにならず、さらに引きこもってしまいます。家族の中だけで解決するのではなく、外に助けを求める勇気を持つことが大切です。また、「いつかは外に出て働くはず」と考え、援助し続けることが引きこもりの長期化につながっています。

2-2.対人関係や過剰労働が原因になることも

引きこもりの長期化によって8050問題が起きているケースもありますが、中には、最初はきちんと外に働きに出ていたのに……というケースもあります。その場合は、対人関係や過剰労働が原因になっている可能性が高いでしょう。対人関係に疲れたり、ストレスを感じたりすることで、うつ病や不安障害に陥っているケースです。仕事など社会と接する際に大きなストレスを感じるため、その結果、家に引きこもってしまうという原因もあります。対人関係や過重労働が原因になっている場合は、体のケアだけでなく心のケアも必要になるでしょう。

2-3.日本社会の風潮・文化が原因になっている!?

アメリカの大手新聞では、日本社会の風潮や文化が原因になっているのではという考えを持っています。引きこもりは外国でも見られる問題ですが、日本社会は統一性を重視しており、異質者を日陰に追い込む傾向が強めです。一方、アメリカでは自主性と自尊心を高める教育を重要視していますが、日本の文化や教育では自己という認識を助長することはしない風潮があります。そのため、日本社会に溶け込めないこと自体が恥とみなされ、協調できない自分を否定してしまった結果、引きこもりを誘発するといわれているのです。

3.8050問題を防ぐポイントは?

それでは、8050問題はどのようにして防げばいいのでしょうか。

3-1.見て見ぬフリは絶対にNG

子どもが辛(つら)ければ社会復帰させないほうがいいと考える親は多いと思いますが、引きこもりは長く継続すればするほど離職期間が長くなるほど社会復帰が難しくなるといわれています。家族は世間体を気にするあまり、見て見ぬフリをしたり、子どもが引きこもっている状況を隠したりしがちですが、しっかりと向き合う姿勢を持ちましょう。引きこもりの存在を隠し、周囲に相談しない家族が多いのも、問題が深刻化してしまう理由の1つです。8050問題を防ぐためには、子どもがこれからどうしたいのか、何をしたいのか話を聞いてあげること、そして早めに解決策を考えることが大切なポイントとなります。

3-2.家族以外の人に相談する

子どもが引きこもりの傾向にある段階で、家族以外の人に相談することをおすすめします。前述したように、8050問題が深刻化するのは家族内で解決しようとしているからです。家族だけで解決しようとしているからこそ、いつまで経(た)っても子どもが家から出ようとはしません。信頼できる友人がいれば相談するのもいいですし、周囲に相談できる人がいなければ行政の窓口を利用するのも方法の1つです。後ほど、【4.厚生労働省の支援や対策について】で説明しますが、行政や国では引きこもりに対する支援を行っています。

3-3.家族だけは味方でいてあげることが大事

中高年の引きこもりは、社会に対する不安や対人関係などが主な原因で家の中に引きこもっています。「自分はどの仕事も向いていない」「社会から必要とされていないから」と自分に自信をなくしてしまっている状態です。心の中では、誰かに話を聞いてほしい・味方になってほしい・認めてほしいという気持ちがあるので、家族だけは味方でいてあげることが大切なポイントとなります。引きこもりを否定したり、早く社会復帰しなさいと責めたりするのは絶対にNGです。

4.厚生労働省の支援や対策について

それでは、厚生労働省の支援や対策について解説します。

4-1.全国66か所に設置した「引きこもり地域支援センター

厚生労働省は2009年に引きこもり対策として、全国66か所に引きこもり地域支援センターを設置しました。引きこもり地域支援センターは各自治体やハローワークと連携しているため、中高年の引きこもりにも対応してくれます。相談窓口業務のほか、自立支援や就業支援・引きこもりに関する啓発活動なども行っているのです。また、引きこもりを早期発見し、引きこもっている本人もしくは親を支援する人材育成にも力を入れています。

4-2.各都道府県・政令指定都市の相談窓口

各都道府県や政令指定都市では、引きこもりに関する相談窓口が設けられています。たとえば、東京都では引きこもりサポートネットというインターネットサイトでの相談が可能です。家族だけで話し合いを進めてもちょうどいい解決策が出てこないと思うので、早めに相談するといいでしょう。家族だけで悩むよりも専門家に相談したほうが、気持ち的にも楽になりますよ。1番よくないのは、悩みに対するストレスを抱え込み、子どもに八つ当たりしてしまうことです。すると、さらに家族関係が悪化し、引きこもりも長期化してしまいます。

4-3.自治体の生活困窮者支援窓口も相談可能

引きこもり地域支援センターの中には、支援の対象を39歳までと年齢で区切られている可能性があります。その場合は、自治体にある生活困窮者支援窓口に相談してください。生活困窮者という名前がついていますが、引きこもっている本人や家族の相談・支援も行っています。生活に困っている場合は、素直にその旨を伝えましょう。「恥ずかしいから」「世間に知られたくない」という考えを捨てることも大切です。

5.8050問題に関してよくある質問

8050問題に関する質問を5つピックアップしてみました。

Q.8050問題の解決の糸口はどこにあるのか?
A.さまざまな糸口はありますが、やはり影響力が強いのは家族・親族です。中高年の引きこもりはつい後まわしにしがちで、本人の精神状態や親が世間体を気にするなどの影響があります。けれども、唯一の肉親である家族が見て見ぬフリをすれば、引きこもり本人は孤独を感じてしまうことになるでしょう。8050問題を抱えている身内がいる人はできるだけ介入し、積極的に相談にのることが大切です。引きこもり本人やお世話をしている親の話を聞いてあげるだけでも、大きな支えになってあげることができるでしょう。家族・親族で手を取り合って協力することが大きな糸口となるのは間違いありません。

Q.引きこもり対策推進事業とは?
A.平成21年度から厚生労働省が取り組んでいる引きこもり対策です。平成30年度からは生活困窮者自立支援制度との連携を強化しているため、訪問支援等の取り組みを含めた手厚い支援を充実させることができました。主に、引きこもり地域支援センターのバックアップ機能等の強化を行っています。詳細は厚生労働省のホームページをご覧ください。

Q.引きこもり本人にできる解決策は?
A.無理に社会復帰をしようとは考えず、まずは自分の体と心を休めることが大切です。好きなことをしてみたり、趣味を見つけて勤(いそ)しんだりしてみると、意外とリフレッシュできます。そこから好きな仕事につなげたり、人との出会いが次につながったりすることもあるのです。1日1回は外に出かけてみるということをすると良いかもしれませんね。また、せっかく時間があるのですから、身のまわりのものを片付けるのもおすすめです。身辺整理をすることで気持ちもスッキリしますし、次にやりたいことが出てくるでしょう。要らなくなったものは不用品回収業者に依頼すれば、一気に片付けることができます。ゼロプラスでは不用品の回収・買取を行っているのでぜひご利用ください。

Q.引きこもりの人でも働ける場所はあるのか?
A.「外に出たくないけど、親の負担になるのは……」と思っている方は、クラウドソーシングを利用するといいでしょう。クラウドそーシングとは、ネットを利用して仕事を受けるというシステムのことです。仕事をしたい人と仕事を発注したい人が契約することで、在宅でも仕事をすることができます。このような働き方も有効な引きこもり対策といえるでしょう。

Q.9060問題とは?
A.8050問題の延長線上にあるのが9060問題です。8050問題は経済的な負担や生活の困窮が問題視されていましたが、9060問題では介護が必要な親へ適切な介護をすることができない状態が主な問題となっています。その結果、ネグレクト状態になってしまい、そのまま衰弱死してしまったという事件も起きているのです。

まとめ

8050問題は、80代の親が50代の引きこもっている子どもを世話するという社会問題です。以前は働きに出ていたのに急に引きこもるようになった・子どものころからの延長で50代になっても引きこもり続けているなどのさまざまなケースがあります。中高年の引きこもりは長期化しやすいため、早めの解決が必要です。何よりも家族や親族の協力が大きなカギになるので、身内に8050問題を抱えている人がいたら相談にのってあげてください。