相続放棄したら片付けや遺品整理はNG!? 注意点やデメリットなどご紹介

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家族・親族が亡くなった際、故人宅の片付けや相続の放棄や承認について悩む方は少なくないでしょう。悲しむ間もなく、いろいろな手続きをしなければならず、何をどうしたらいいか分からないという方もいらっしゃるはずです。そこで今回は、相続放棄のポイントややってはいけないこと・片付けの注意点などをご紹介します。

  1. 相続放棄について
  2. 相続放棄した場合の片付けについて
  3. 相続放棄や片付けについてよくある質問
  4. まとめ

相続放棄について知りたい、片付けや遺品整理はどうしたらいいのか? と悩んでいる方のヒントになる情報をまとめました。ぜひ最後まで読んでみてください。


1.相続放棄について

まずは、相続放棄について、基本的な内容から見ていきましょう。

1-1.相続人について

相続する権利のある人を相続人といい、これは人の死亡により発生するものです。戸籍の順番により決まり、基本的には配偶者(夫妻)・直系卑属(子孫)・直系尊属(親・祖父母)・兄弟姉妹・ほか親族の順となります。

1-2.相続放棄について

相続放棄とは相続する権利のある人がその権利を手放すことをいいます。せっかく相続をする権利があるのに、なぜわざわざ手放すのかと思われるかもしれません。実は、相続する対象には、財産や遺品、土地など価値のあるものだけでなく、借金や第三者の保証人であることなどの債務も含まれます。つまり、400万円の財産があっても、1,000万円の借金がある場合、相続放棄しないと600万円の負債となってしまうというわけです。

1-3.相続放棄のデメリット

相続放棄には、借金や債務を手放したり、親族の相続争いなどから離脱できるというメリットがある反面、以下のようなデメリットもあります。

1-3-1.人に迷惑がかかる

自分が相続放棄を行うと、次の順位の相続人に相続権が移ることになります。また、全員が相続を放棄した場合は、債務の返済が行われず債権者が損をするというケースもあるのです。詳しくは後述しますが、部屋の片付けや遺品処分もできないため、賃貸住宅の大家さんなどにも迷惑がかかります。

1-3-2.相続財産の管理責任は残る

故人に持ち家がある人が相続放棄をした場合、持ち家や土地を勝手に処分することはできません。しかし、不動産などの権利を手放したとしても、管理義務がなくなるわけではないのです。管理不足により第三者が被害などを受けた場合は損害賠償責任が発生することもあります。たとえば、故人の家が老朽化・崩落し、近隣住民にけがをさせたときなどです。

1-3-3.換金・換価価値のある形見を引き継げない

相続放棄をすると、基本的に何も引き継ぐことはできません。ただし、故人の着ていた古着・位牌(いはい)・写真など、一般的に換価価値のないものについては受け取ることができます。しかし、売れば何十万とする腕時計などを引き継ぐことはできません。いくら思い入れがあるからといっても、金銭的な価値が見込めるものを形見として受け取ることはできないのです。書籍やアンティーク品など、思わぬ価値がある遺品があることもあるので、十分注意しましょう。

2.相続放棄した場合の片付けについて

次に、相続放棄をした場合の片付けや遺品整理についてご紹介します。

2-1.相続放棄したら遺品には手をつけられない

相続放棄した場合は、故人の遺品・家財などを売ったりもらったりすることはもちろん、勝手に捨てたり処分したりすることもできません。処分した時点で相続義務が発生するので注意しましょう。

2-2.相続放棄した場合の片付け方法

相続放棄した故人宅は、基本的には片付けることができませんが、できることが数点あります。

2-2-1.持ち家の場合

明らかなゴミ(生ゴミや紙くずなどだれが見てもゴミであるもの)は処分することができます。また、上記のとおり持ち家の管理義務は残ってしまうのです。管理義務を逃れるためには、裁判所に相続財産管理人の選任を申請する必要があります。

2-2-2.賃貸の場合

賃貸物件の場合、大家さんや不動産業者に片付けを求められますが、相続放棄したのであれば、やはり片付けたり処分したりしてはいけません。賃貸物件に残ったものを、一時的にトランクルームや自宅に引き取り、処分せずに取っておくという方法もありますがあまり現実的ではないでしょう。相続人がいない場合は、大家さんなどが実費で片付けを行う必要があります。こちらも、明らかなゴミ類の処分は可能です。

2-3.独断せず一度弁護士に相談を

このように、相続放棄や遺品整理には、やってはいけないことや注意点が数多くあります。自分で判断せずに一度弁護士に相談したほうがよいでしょう。家財を処分したり、遺品を売ったりすることで、知らずのうちに相続人となってしまうこともあるのです。

3.相続放棄や片付けについてよくある質問

Q.故人宅がゴミ屋敷なのですが、どうしたらいいですか?
A.相続放棄をする場合、明らかなゴミを捨てること以外は、何もできません。持ち家の管理については、弁護士に相談のうえ、裁判所に相続財産管理人の選任を申請してください。

Q.相続放棄は取り消しできますか?
A.相続放棄の取り消しは、原則不可です。ただし、以下の場合は取り消しできる可能性があります。

  • 脅迫されて無理やり相続放棄をさせられた場合
  • 「故人には多額の借金があるから相続放棄したほうがいい」など、だまされて相続放棄をした場合

Q.故人の未払い家賃や医療費を請求されたのですが?
A.家賃の支払いをした時点で、相続を承認することになってしまいます。ただし、故人の預貯金などから支払いをするのはOKです。

Q.相続放棄をするまでの期限は?
A.自分が相続人であることを知った時点からカウントして3か月の熟考期間が設けられています。ただし、相続を承認するか放棄するかすぐに決定できないこともあるでしょう。その場合は、期間の延長(伸長)も認められています。

Q.孤独死があった部屋の特別清掃費や片付け業者費用を請求されているのですがどうしたらよいですか?
A.連帯保証人である場合や、相続人の相続放棄申請が完了していない期間は、片付けの義務が発生してしまうことがあります。しかし一方で、家財の処分をすることにより相続放棄ができなくなってしまうこともあるため、すぐに弁護士に相談し、専門的なアドバイスを受けたほうがよいでしょう。

4.まとめ

相続放棄や故人宅の片付けなどについてご紹介しました。相続放棄は、法律の専門知識が要される問題です。故人宅を早く片付けたい・遺品整理をしたいと思っても、慌てず専門家に相談してからにしましょう。また、明らかなゴミ類を片付ける際は業者の利用をおすすめします。自分で行うよりも簡単に片付けができるうえに「業者に明らかなゴミ処分だけを依頼した」というほうが客観的な証明になりやすいためです。ただし、遺品を売却したり、ゴミ以外のものを処分すると相続の承認行為となってしまうので注意しましょう。